【本】『東大留学生ディオンが見たニッポン』

この国はグローバル社会に向かっているのだろうか

 最近わが家の近くにあるコンビニやスーパーの店員に、ネパールやベトナム、中国などの国籍をもつ若者が非常に多くなった。彼らは流暢な日本語をつかい、にこやかに客に応対しているけれど、現代のニッポンをどのように見ているのだろうと思うことがある。そこで今月は岩波ジュニア新書の『東大留学生ディオンが見たニッポン』をとりあげた(ディオン・ン・ジェ・ティン著)。ディオンは二〇一三年、18歳でシンガポールから東大に留学し、現在22歳になる女性である。

 英語、シンガポール語、仏語、日本語を駆使する語学力の持主だが、日本に住んで一番困ったのは敬語の使い方だという。日本語独特の敬語表現は、日本人でも難しいと感じるが、敬語を普段に使いこなせれば、日本の文化がもっと理解できるのではとも書いている。「お疲れさま」や「よろしくお願いします」などの英訳が見つからないという。敬語を使う日本人の礼儀正しさや気配りのよさを認めつつも、一方で、「日本には、自分の国の文化以外に興味をもたない若者が恐ろしい程多い」と嘆き、「この国は本当にグローバル社会に向かっているのだろうか」と厳しく問いかけている。もしかしたら日本のコンビニやスーパーで働く外国籍の若者も、同じ思いでニッポンを見ているのではとふと思った一冊だった。

●『東大留学生ディオンが見たニッポン』
ディオン・ン・ジェ・ティン 著
岩波ジュニア新書
950円

六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。

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