古山シネマ

【映画】『あいあい傘』

結婚して夫婦で歩いていくことは、あいあい傘で雨の中を歩くこと…

映画『あいあい傘』
■監督・脚本:宅間孝行
■出演:倉科カナ、市原隼人、立川談春、原田知世
■配給:SDP
◎中洲大洋、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、TOHOシネマズ福津、T・ジョイ久留米 他にて10月26日(金)公開

 人気舞台の映画化作品と言えば、いくつもありましたね。なかでも忘れられないのが、つかこうへいの舞台を映画にした『蒲田行進曲』。もう36年前(えっもうそんなに?)の大ヒット映画だし、三谷幸喜の舞台『12人の優しい日本人』や『笑いの大学』などの映画化も思い出します。

 そして今月ご紹介するのが、いま注目の舞台演出家、脚本家、そして俳優としても活躍を続ける宅間孝行が自ら監督も兼ねた舞台の映画化『あいあい傘』です。宅間監督が2012年まで主宰していた劇団「東京セレソンデラックス」の隠れた名作と言われる舞台。これをもっと多くの人に届けたいという演出家宅間の想いで、9年の歳月を費やして実現した映画なんです。

 逢いたいのにずっと逢うことができなかった父と娘の5日間の話です。小さな田舎町の恋園神社では年に一度の祭りが近づき、いつもは静かな境内も出店の準備に追われるテキ屋などで賑わっています。

 そんな町に一人の若い女性さつきがやってきますが、彼女にはずっと胸に秘めてきた目的がありました。25年前のある日、突然幼い自分と母の前から姿を消した父がこの町にいるらしいと言う話を耳にし、父・六郎を探しにきたのです。宿に向かう途中で偶然出会ったのは、「六郎を知る」と言うテキ屋の元気なお兄さん。バッグから取り出したカメラを手に、仕事で取材に来たと嘘をついて彼に町を案内してもらうことに。

 ところでテキ屋といえば寅さんですよね。市原隼人演じるこのテキ屋の清太郎、会った途端にさつきに一目ボレ。至れりつくせりのノボセぶりはまさに寅さんを思い出して笑っちゃいます。彼の案内で一歩づつ六郎に近づき、この町で父がどんな生活を送っているのかを知るさつき。

 映画の中で何度も描かれる父がいた25年前の幸せそうな家族の姿、彼が妻子のもとを去った原因、この町で生きてきた理由…などの回想シーンは、モノクロ映像が使われるというニクイ演出で観る者はウルウル状態に。そしてこの感動の大きな要因となっているのが、父・六郎を演じる噺家立川談春の名演です。おまけにエンディングに流れる主題歌『小さな願い』は11月にデビュー40周年を迎える竹内まりやです。

 鑑賞中、私の隣にいた中年男性は、何度もメガネをとって目元をぬぐっていました。特に娘のいる男性の方々、ハンカチをお忘れなく!

古山和子
RKBアナウンサー時代には「ユーアンドミー」や「ザ・モーニングダイヤル」などを担当。現在もラジオ番組や講演会で映画を中心にしたおしゃべりで活躍中。

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