博物館・美術館

福岡市博物館「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」

7月7日(土)~8月26日(日)

鮮やかな浮世絵の歴史は春信から世界最高峰のコレクションが里帰り

 今でいえばAKB48”なのだそうです。CDセールスなどでランキングされるのと同様に、江戸時代では人気を示すバロメーターのひとつが浮世絵の売れ行きでした。

 下町の町娘を描いた『浮世美人寄花笠森の婦人卯花』は、明和6年(1769)頃の春信の作品です。お茶屋の看板娘、お仙は、当時「明和の三美人」ともてはやされました。それまでの人気の中心は歌舞伎役者や吉原の遊女でしたが、芝居見物のヒマも吉原に行く金もない庶民は、お茶一杯で会える町娘に心浮き立ったようです。父親を手伝って店先に立つ美人の孝行娘を一目見ようと、店は大勢の客で賑わったとのこと。

 春信がデビューした頃、浮世絵は墨摺りの版画に数色を筆で色づけした地味なものでした。そんな中、裕福な趣味人たちが、よりカラフルな絵を求めて春信に制作を依頼したことが、錦絵と呼ばれる高度な多色摺りの誕生につながりました。「錦絵の創始者」と春信が言われる所以です。豊かな色彩とともに、歴史や伝説に題材をとった「見立」が、知識人の知的優越感をそそりました。

 「これはいける!」版元はそう思ったのでしょうか。高級志向の知識人から、一般大衆にマーケットを広げるために題材に選んだのが、江戸の庶民生活でした。美人の町娘だけでなく、様々な日常の風景も描かれています。春信の代表作のひとつ『風俗四季哥仙神楽月』。旧暦11月、盛装した娘を父親が肩車して七五三の宮参りをする家族です。ヨーロッパでも版画がモノトーンの時代に、日本では浮世絵を通して誰もがカラフルな文化を楽しめました。

 今残っている春信の作品は約2千点。その8割は海外に流出していて、世界一の浮世絵コレクションを誇るボストン美術館は、600点以上を所蔵しています。今回は初めて日本に里帰りする作品もあるとのこと。貴重な機会をお見逃しなく!

繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。西南学院大学非常勤講師(ジャーナリズム)

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