【本】『こころ彩る徒然草 兼好さんと、お茶をいっぷく』

私も、兼好さんとお茶をいっぷく

 今月とりあげた本は、『こころ彩る徒然草 兼好さんと、お茶をいっぷく』(木村耕一著1万年堂出版)。ほっこりした題名にひかれ、ぜひ私も兼好さんとお茶をいっぷく飲みながらお話がしたいと手にとった。

 武士の台頭する鎌倉時代のおわりを生きた兼好法師は、本名を卜部兼好といい、三十代で出家したといわれる。出家したあとも、歌人、知識人として当時の文化人や名士との交流を続け七十才あまりで亡くなる。『徒然草』は兼好が亡くなって三百年も経ってから、江戸時代の編集者の目にとまり、世に出て一躍ベストセラーに。今にいたるも愛読されている事情をこの本を読んで初めて知った。序段と二四三段からなる随筆だが、なかでも「これを守ればあらゆる失敗がなくなります」という第二三三段に、兼好のすこしきびしい生き方がうかがわれ心ひかれた。「あらゆる失敗は、自分がそのことに慣れているように振る舞い、得意げな態度をして、人を侮り、軽んずることから起きるのです。」原文は「あらゆるとがは、人をないがしろにするにあり」。人を侮り、軽んずることを戒める、今から七百年前の兼好法師としみじみ話せる時間をつくって下さった筆者の木村耕一さんに感謝しつつ、ほっこりした読後の余韻を楽しんだ。

●『こころ彩る徒然草 兼好さんと、お茶をいっぷく』
木村耕一 著
黒澤 葵 イラスト
1万年堂出版
1,620円

六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。

PAGE TOP