終活特集 セカンドライフをデザインしよう!

Date:2014年06月27日13時32分 | Category:特集 | Writer:ぐらんざ編集部

いつからスタートさせるか、もう決めていますか?
第二の人生――。
60歳を契機に始める人、子どもの独立、退職を機にスタートさせる人…
さまざまあると思います。
いつから新たな人生を始めるのか、そのタイミングも大切ですが、
もっと大事なことは何を準備するかということ。
これまでの自分を振り返り、支えてくれた周りの人を想い、そして、
家族に残し伝えるべきものは何か?
第二の人生を謳歌したその先にあるものを、少しだけ想像してみませんか。


むかしの自分に、会いに行こう。

―― 自分史のススメ ――

なんとなく哀愁漂う語り口。
どこかで見たような風景が脳裏に浮かび、「こんな時代を生きてきたね」
と思わず共感してしまう。

同じ時代を生きてきた共感性の高さが人気の『ハットをかざして』は、著者・矢野寛治(中洲次郎)さんの自分史的エッセイ。
小学生の頃からを振り返り書き留めることで、矢野さんに心境の変化はあったのだろうか。



―― あるべき自分に戻りつつある今。 ――

 矢野さんが人生を総括しようと『ハットをかざして』を書きだしたのは、定年の2年ほど前。自身曰く、サラリーマン時代は“甲殻人間”だった。組織の中で戦う内にいつの間にか身に着けた鎧を外すのに60歳はいい区切り。人間らしく背骨をぴしっとただし、甲殻から「脊椎人間」に戻り晩年に向かっていこうと思った。5歳からさかのぼり大学生まで、組織を離れてむかしを書いていると、もとある自分に、素直に戻ったように感じている。

 「自分の納得のために…というのももちろんあるけど、こうやって若い時のことを書き残しておくと、親にも青春があったんだと、子どもが親のことをすこし好きになる。どの家でも親子はうまくいかないことがあるだろうけど、どこかで反発していても、愛されてたなって気もして。それがもし文章で残っていると、親孝行には遅いかもしれないけど、ありがとうございましたって気になる。それに、ひょっとすると孫が読むかもしれないしね。こんなことを考えてたんだって理解してもらって、親近感を抱いてもらって、なおかつ道を間違わんでいてくれるかもなって。ちょっと照れるけど、私はこういう人間でしたと残すのはいいことだと思うんですね」。



ちょうど執筆を始める頃に、お母さんから受け取った一つの風呂敷包み。
中には大学4年間に父母に送り続けた約150通の手紙が!

これが『ハットをかざして』の原点であり、矢野さんの青春の記録。


―― 「大きくなったら、何になろうか!」 ――

 現在65歳の矢野さんが10年、20年先を見つめ思うことは、「大きくなったら、何になろうか!」ということ。

 「『仰げば尊し』という歌の歌詞に、“身をたて名をあげ、やよはげめよ。今こそわかれめ、いざさらば。”とあるでしょう。これが頭の中を渦巻くんですよ。自分はまだ、身をたてを叶えていないなと。あの世に行って両親や祖父母にあった時に“よくやりました”って褒められるのか、“まだまだでしたね”と言われるのか。やっぱり親の期待に応えたかったんでしょうね、もうちょっと頑張ってみようという意味で『大きくなったら、何になろう!』と言っています。小学生の時によく祖母に言われたものですよ(笑)。だから僕は、お迎えが来るまでこれでいこうと。ちょっとロマンチックでノスタルジックで、なによりも夢があっていいじゃない。“もうしまえた”とか“これからどうする?”っていうとさ、意外と寂しいものよ」。

自分が生まれ落ちた宿命プラス、まだやるべきことがあるように感じるという。“老後といえども現役”ということを胸に刻み、世のため人のため、そしてなによりも自分・家族のためにできることすべきことを楽しみながら探している。組織を離れるときに第二の人生を設計し、歩みだした矢野さん。
 さてみなさんは、どんなセカンドライフをデザインしますか?


コラムニスト、エッセイスト、コメンテーター
矢野 寛治(中洲次郎)さん

昭和23年、大分県中津市生まれ。RKB毎日放送「今日感テレビ」などに出演。
本誌では「ハットをかざして」を連載中。
西日本TNC文化サークルでは「MYエピソードで綴るエッセイ教室」(天神教室・久留米教室)を担当。
今月からRKBラジオで「フカヤいきいきウーマン」のパーソナリティも行う。




映画に見る“自分史” 
教科書にはのっていない歴史が心を動かした。 ― 映画『小さいおうち』―


 平成に青春を過ごす世代にとって、昭和は遠い過去。そこで生きていたおじいさんおばあさんが、どんなものに心を躍らせ、悩み、諦め、何よりも青春を謳歌していたのかなんて、まったく想像がつかない。

だからといって、かしこまってそんなことを聞くのはちょっと気恥ずかしい。だからこそか、映画『小さいおうち』の健史(妻夫木聡)がなんだか羨ましい。

だって、生涯独身を貫いた大伯母タキ(倍賞千恵子)の身の回りの世話をする代わりに、執筆中の“自叙伝”を読ませてもらえるのだから。

健史はこのタキの自叙伝でいろんなことを学ぶんですよね。当時の風潮や、社会の動き、学校の勉強だけでは知ることができない物事がそこにはつまっているようで…。

それに、ほかの親族にはそっけなかったタキも、自叙伝を一生懸命読んでくれる健史には心なしか優しかったり…。

“自叙伝”という媒体を介して、世代が異なるふたりの心の痛みや喜びがシンクロしていきはじめて…。

生涯独身だったタキだけど、自叙伝のおかげで、最期には健史という理解者がいてくれて、きっと幸せだったんだろうなと思いたい。



第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。

監督:山田洋次
出演:松たか子、黒木華、橋爪功、吉行和子
配給:松竹
◎8月8日(金)発売/レンタル開始

―あらすじ―
昭和初期、東京郊外に佇む赤い屋根の家に奉公する女中タキが見た、ある“恋愛事件”。
その時、タキが封印した秘密が、60年の時を経た今、紐解かれていく。
時代が許さなかった恋愛事件の主役である女主人・時子の思いがけない運命と、彼女を慕い続けたタキ。それぞれが胸に秘めた切ない想いとは―?