芸術・文化特集ミュージアムは面白い!

Date:2015年10月27日15時38分 | Category:特集 | Writer:ぐらんざ編集部


私たちの感性を刺激してくれる、美術館や博物館。
でもどんな風に観賞を楽しんでいいのかわからない、芸術は難しいと感じたことはありませんか?
そこで今回は、福岡の美術館、博物館の学芸員さんたちに観賞のポイントを教えてもらいました。
ここを知れば、ミュージアムをもっともっと楽しめますよ。


重要文化財 尾形乾山『花籠図』、
江戸時代
福岡市美術館(松永コレクション)



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ルイ=ジョゼフ=ラファエル・コラン 『海辺にて』、1892年
福岡市美術館蔵


写真や画集で観た気になっていませんか?
絵画は平面だから印刷物でも変わらない、なんて思わず、ぜひ生で作品を観てみてください。
たとえばこの作品は縦2m97cm、横4m46cmの超大作!このスケール感は実際に絵の前に立ってみないとわかりません。
それに間近に観ると、筆の運びかたや絵の具の重なりなどから画家の息づかいを感じることができます。
近寄ってみたり離れてみたり、作品との距離によって絵の印象が変わり、色んな発見があるはずです。



田部光子 『繁殖する(1)』 、1958-88年
福岡市美術館蔵


画家の個性は絵に用いられた素材にも表れます。
理解するのが難しいと敬遠されがちな現代の絵画は、そこに何が描かれているかを読み取ろうとするからわからなくなってしまうのかも。
シンプルに素材や質感に注目してみましょう。
この作品には油絵の具のほかに、アスファルトや石膏、竹の筒まで使われています。
今まで誰も見たことのない独自の絵画を目指して、それまでの絵画の常識を打ち破ろうとして生まれたのが目の前の作品だとしたら?
画家がもがくなかで到達した新しい世界、その痕跡を素材からたどってみてください。



ケーテ・コルヴィッツ『寡婦1』(連作『戦争』第4葉)、1922-23年
福岡市美術館蔵


静物画、風景画、絵画のジャンルは色々ありますが、人物に注目してみましょう。
この版画作品に描かれている女性の表情、どう見えますか?悲しみと苦しみが同居する、心痛な面持ちですね。
寡婦が腕に抱えているのは、わが子でしょうか?それとも?
第一次世界大戦で息子を失った後に制作された本作には、作者・コルヴィッツの母としての想いも重ねられているようです。
絵画の中の人物は、なぜこの表情をしているのだろう、なぜこの格好をしているのだろう。
そんな風に考えながら、作品に宿る物語に思いを馳せてみましょう。


仙冑 『あくび布袋図』、江戸時代
福岡市美術館蔵(石村コレクション)



堅苦しく考えず、絵画の世界に飛び込んでみるのも一興。そこで気になったものは、どんどん調べてその背景を知る。
作者の意図を知る。そうすれば世界が広がり面白くなりますよ。
たとえば現代版ゆるキャラともいえるこの布袋様。
あくびをしている様子がほほえましくユーモラスですが、絵に添えられた賛文には、釈迦は双林に帰ってしまい弥勒菩薩も内宮から出てこないことを哀しむ言葉が綴られています。
これは江戸時代末期の腐敗した世相への批判とも読め、作者・仙僂料義里箸靴討龍気┐箍めにつながるのです。


教えてくれたのは

福岡市美術館
学芸員 正路 佐知子さん



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国宝『多聞天立像』(四天王のうち、金堂所在)、飛鳥時代
奈良・法隆寺所蔵


 前知識はなくて大丈夫です。
まずは、純粋に自分が仏像や彫刻を観て、「すごい」「かっこいい」と思うかどうか、これが一番大事なんです。
ボーと正面から観て、それから色んな角度から見てみる。
仏像や彫刻は立体的に出来ているので、その後は横から観たり、斜めから観たり色々試してみてください。
角度によって表情の見え方も変わるので、そうやって自分好みの角度を見つけてみてくださいね。



国宝『重源上人坐像』、鎌倉時代
奈良・東大寺所蔵


 仏像や人物彫刻の表情に注目すると、そこから色んなことが見えてきます。
例えば、この重源という高僧をかたどった肖像彫刻の表情を観ていると、彼の人となりや生き様が見えてきませんか?
また時代によって、表情にもモードがあるんです。
特に仏像はその時代ごとの、“こんな仏に救ってほしい”という理想的な顔を表現しています。
どんなものに救いを求めていたのか—。そこを考えてから解説を読んでみると一層理解が深まって楽しいですよ。



重要文化財『如来坐像』、飛鳥時代
東京国立博物館・法隆寺献納宝物


 仏像や彫刻がどんな背景で創られたのか、当時の人々にとってどんな存在だったのかに想いを馳せてみて。
例えば、仏像の多くは伏し目がちですがそれはおそらく礼拝者が仏像を見上げたときに丁度目が合うように作られているのではないでしょうか。
その目線の先に立ち、かつてこの仏像を崇敬していた人々がどんな気持ちでこの顔を見ていたのか、追体験をしてみるのも面白いかもしれませんね。
また、像をみることでその当時の文化が大陸からの影響を大きく受けていたのか、日本独自の文化が花開いていたのかも感じ取ることができますよ。

教えてくれたのは

九州国立博物館
研究員 楠井隆志さん




『美の国 日本』
〜11月29日(日)まで開催中!
九州国立博物館開館10周年を記念したこの特別展では、縄文時代から鎌倉時代に至るまでの日本美術の至宝が一堂に会する。
日本が世界に誇る国宝、重要文化財級の名品ばかり。この機会に本物の美しさに触れて。
■観覧料/一般1,600円、高大性1,000円、小中生600円


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伝八田出土の青銅器鋳型
弥生時代
福岡市博物館所蔵


 縄文時代や弥生時代は原始的—。そう考えられがちですが、実はそうでもないんです。
当時造られたものを復元しようとしても、どうやって造っているのかがわからないものも少なくないそう。
機械技術やコンピューターがない当時、どのようにして造ったのか。自分だったらどう造るのか。
はたまた、どのように生活の中で使われていたのか。それを考えてみると、古代の人々の生活にグッと親近感がわきますよ。



国宝・金印「漢委奴国王」、弥生時代
福岡市博物館所蔵


 私たちが知っている歴史の多くは歴史書や言い伝えなどが元になり、構成されています。
しかし、「勝者の歴史」という言葉もあるように、歴史書は治世者側から書かれたことが多く、本当に正しいのかどうかはわかりません。
しかし、物である文化財は嘘をつきません。
目の前にある、歴史の証拠物・文化財を観ながら自分なりに仮説立ててみると、より歴史の広がり、奥深さを感じられます。



福岡藩大老・黒田一成所用具足
(大小頭立置手拭形兜・鉄錆地紺糸威胴丸具足)、桃山時代
福岡市博物館所蔵


 文化財は、博物館に行く前後も楽しめるのもポイントです。
例えば、戦国武将の甲冑や剣を観るときは、その武将に関わりのある歴史小説を読んでから行くと、実物を前にするだけで胸が高鳴りそうですよね。
もちろん反対に、博物館で実物を観て気になった文化財があれば、それに関する本を探してみる楽しみ方も◎。
歴史の舞台と現代の私たちを直接結び付けるものが文化財なのです。


教えてくれたのは

福岡市博物館
学芸員 本田浩二郎さん