欧州うまかもん紀行

Date:2016年02月08日16時28分 | Category:ぐらんざ特派員欧州紀行 | Writer:佐藤さゆり
第7回 ベルギーCentho(セントー)チョコレート



チョコレートに始まり、チョコレートに終わる、ベルギーの暮らし。

 子供の頃、チョコレートといえば「チロル」か「5円チョコ」をそろばん塾の帰りに買ってコソコソ食べるか、母が気が向いた時に買ってくるチョコボールやアポロチョコをチビチビと何日もかけて食べるぐらいだった。チョコレートは毎日のおやつではなかったし、おやつの中でも特別な、王様的な存在だった。ところが、ベルギー人にとってチョコレートは日常。驚くほど幼い頃からチョコレートに親しんでいる。
 例えば、ベルギー生まれの我が娘。彼女が1歳半の頃、保育園でチョコレートコーティングのパンにかぶりつく姿に絶句したことがある。やっと離乳食を終えたような子がチョコレート食べて大丈夫か?という衝撃と、2歳までは、飴、ガム、チョコレートなど甘いお菓子は絶対与えまい!と、時に泣き叫ぶ娘から甘いもの引き剥がしてがんばっていたのに、先生それはあんまりじゃないですか。。というやり場のない思いとで、その場にへたり込みそうになった。この日、普段より早く迎えに行ったので、たまたま目撃しただけで、実はもっと早い段階から保育園ではチョコレートをたべさせていたのかもしれない。。
このようにベルギーでは乳児期から毎日の暮らしにチョコレートがある。朝食、おやつ、コーヒーブレイク、デザート。チョコレートと共に始まりチョコレートと共に終える。チョコレートによって一日の暮らしが支えられている。


シングル オリジン
青のCENTHO(セントー)チョコレート


 毎日のチョコレートだからこそ、繰り返し買ってもらえる物を作りたい。そのためには、奇を衒うような発想ではなく、チョコレートそのものの味と品質を極めることが、ベルギーに2,000店以上はあるといわれているチョコレート店で生き残る道に繋がる。。
 Centhoのオーナー兼ショコラティエ、ゲールト・デコスター氏のこの信念は、原材料選びから製造工程に至る隅々にまで息づいており、2002年の創業時から一切の妥協を許さないチョコレート作りに挑んできた。カカオ豆もワインと同じように、産地によって違う風味をもたらすことに着目したデコスター氏。世界のカカオ豆を混ぜ合わせ風味を調整するブレンドチョコレートではなく、気候風土がもたらす産地独自の風味をそのままチョコレートにする「シングルオリジン・シングルチョコレート」にこだわった。
 Centhoの店頭にはコスタリカ、ヴェネズエラ、コロンビア、エクアドル、バヌアツ、ガーナなどカカオ原産国ごとのチョコレート十種類がカカオ産地の世界地図とともに並ぶ。このように産地を限定して作られるオリジンチョコレートの味わいは、Centhoカラーの青のように深みがあり、それでいてどこまでも澄み渡る。そのピュアな風味は、まさにその名の通り、チョコレートの原点。本来、チョコレートとはこうあるべきだと気付かせてくれる逸品だ。


チョコレートを極めるデコスター氏の挑戦


 デコスター氏の、チョコレートに対する真摯なまでの姿勢は、彼のプラリネpralineにも垣間見られる。プラリネとはウイスキーボンボンを想像していただくと理解しやすいと思うが、リカーやガナッシュ、クリーム、ソフトチョコレート、フルーツジャムやキャラメルなどクリーミーな素材をチョコレートでコーティングしたもの。メーカーにもよるが、中身が柔らかいのでおのずとコーティングのチョコレートは厚く硬くなりがちだ。
 しかしCenthoのプラリネは違う。プラリネがもつ柔らかな食感を損なわないよう1ミリ前後の極薄チョコレートでコーティング。それでいてチョコレートの味はしっかり感じられる。とかく中身の素材を重視しがちなプラリネでも、主役はあくまでチョコレート。口に含んだ時にチョコレートの味が際立つよう中身の素材だけでなくその構造にも配慮した。ジャムやドライフルーツをボトムに置きガナッシュを重ねる伝統的な2層構造では、フルーツの印象が強く残りチョコレートの味が負けてしまう。そこでデコスター氏は厚さ約8ミリのプラリネを3層にし、2層のガナッシュの間にフルーツを挟み込むという画期的な手法を編み出した。フルーツは一般的にガナッシュより重く沈み込んでしまうため、3層にするのは熟練のチョコレート職人でも至難の技。世界でもトップクラスの技術を持つデコスター氏だからこそ実現できた製法である。。


奇跡のプラリネ
国際チョコレートアワード金賞受賞
塩キャラメル「サラン」



 2013年、チョコレートのオリンピックともいわれている国際チョコレートアワード
 最高賞の金賞を受賞した、塩キャラメルプラリネ「サラン」。Centhoに来店するおよそ90パーセントのお客さんがキャラメル系の商品を購入するのを見て、キャラメルで新商品が出来ないか??と思いたち、デコスター氏とキャラメルの長い格闘が始まる。彼がキャラメルに求めた「プラリネに成形できる硬さを持たせつつ、クリーミーでなめらかな食感」の実現までに、およそ2年の歳月を費やしたという。
 毎日、小さな鍋にキャラメルの材料を煮詰めては試行錯誤を繰り返し、とうとう理想のキャラメルができる温度を探し当てた。しかし、理想のキャラメルだけでは満足できなかったデコスター氏はさらに追究を進め、キャラメルにわずかな塩味を加えると口の中に温もりを感じることを発見。キャラメルプラリネの上面にフランス・カマログ産のシーソルトを散りばめ、国際チョコレートアワードで奇跡のプラリネと賞賛された’温かいキャラメルプラリネ’「サラン」を生みだした。デコスター氏の飽くなき探究心とチョコレートへの情熱と執念がもたらした金賞といえるだろう。



バレンタインに
Centhoチョコレートを!


 福岡三越で開催中のバレンタインフェアでCentho(セント)チョコレートを販売中。また、三越銀座本店のバレンタインフェアにデコスター氏がベルギーから来店予定。3年前から銀座三越のバレンタインフェアーに参加し始め、毎年の訪日を心待ちにしているという。世界一のチョコレートを作るショコラティエが、東京でCenthoの青い紙袋を下げている人をみると、「なぜCenthoを選んでくれたのか?」とつい声をかけてしまうという。ほとんどの場合は不審者扱いされ、相手に逃げられてしまうらしいが、なかには参考になる意見が得られることもあるとのこと。東京でも彼の探究心は全開だ。 福岡三越のネットショッピングサイトからもオーダー可。ぜひ、この機会にCenthoチョコレートをお試しいただき、デコスター氏のチョコレートへの想いを感じていただきたい。

Centho chocolate (セントーチョコレート)

www.centho.be(日本語サイト有)info@centho.be
Veeweidestraat 3
3080 Duisburg (Tervuren)
België
電話番号:+32 (0)2 767 07 74

ブリュッセル中心地から車で約40分。静かな住宅街に店を構える。
デコスター夫妻の長女Centaと長男Thomasの頭文字をとって
店名にした家族経営の小さなチョコレート店。
2007年以降、ベルギーベストチョコレートショップ ベスト8圏内をキープ。


ショコラティエ
Geert Decoster(ゲールト デコスター)

中学に上がる頃にはショコラティエになることをすでに決めていたという。ベルギーで有名な「エリスホウト料理学校」へ進み、パン、お菓子、チョコレートについて専門的に学び始める。のちにパリの「エコール ベルエ」、リヨンの「エコール リチャード」でさらにチョコレートの知識と技術を深める。




■ライター プロフィール
佐藤さゆり
大分県出身 。コピーライターとして広告代理店で6年間勤務後、2004年ベルギーに移住。
2007年英国人男性と結婚後ベルギーで出産。現在、ベルギーを拠点にヨーロッパの旨いもんも食べながら7歳と5歳、2児の子育て奮闘中。


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