はかた宣言・70 清音・濁音

Date:2017年04月17日17時44分 | Category:はかた宣言 | Writer:ぐらんざ編集部

 博多松囃子の「笠鉾」はどう読むか。カサホコかカサボコか。博多祇園山笠もヤマカサかヤマガサか。
博多では清音。濁らずに、カサホコ・ヤマカサという。河豚だってフク。

 どなただったか、「松囃子はマツバヤシではなく、マツハヤシだ」、といわれたのを聞いたことがある。
理由は聞き漏らした。
祭り関係の話のときはたいてい酔っているので、現行のきまりごと以外は忘れることもある。歳だ。

『番と衆|日本社会の東と西』※1という本の冒頭で、「関東と関西」の言葉の違いなど文化の違いが考察されている。
言葉でいえば関東は濁音、関西は清音の傾向が強いそうだ。
著者の福田アジオ氏は出身が三重県なので関西語圏。
「福田」はフクタと清音だそうだ。同じ名前が関東ではフクダと濁る(群馬県の元総理福田さんはフクダさん)。

 田の字だけでは清音のタなのに、福の字とつながるとダと濁る。
これを濁音化というそうだ。濁音化は関東の特徴だという。
山手線の駅名、新橋・品川・五反田・目黒…と濁音化だらけの例が示されている。
また関西の例では、研究所はケンキュウショ、神社はジンシャという清音の例をあげている。
そういえば、亡母はクシダジンシャといっていた。ラグビーはラクビー。そういう自分でもジンシャとジンジャが入りまじる。

 また、民俗学者柳田國男はヤナギタ。
実は柳田は養子先の名前で、柳田家は信濃飯田藩(長野県)の出だから、関東語圏でヤナギダなのだ。
けれど、兵庫出身の國男さんは人がヤナギダさんとよぶと、ヤナギタですと訂正していたそうだ。
辞書もヤナギタでしかでてこない。

 ちなみに『零戦燃ゆ』などのノンフィクションライター柳田邦男さんは、ヤナギダと濁音化する。
出身は栃木県、関東語圏だ。

 濁音のことでは思いだすことがある。
『博多っ子純情』を連載している頃、劇画は濁音の混じるタイトル作品がヒットするといわれていた。
ゴルゴ13・巨人の星…。書名もマガジン・サンデー・ジャンプ…。「劇画」自体、濁音が2コ。濁音ヒット説とネーミングしよう。濁音は印象強いし。

 江戸は生き馬の目を抜くといわれたほどで、旗本奴・町奴 の伊達者※2、かぶき者のように自己主張が強い。
言葉もべらぼうめ、てやんでえと濁音で強調する。なにいうてはりまんのんよりは確かにインパクトがある。

 関西の清音傾向は、雅びな王朝文化か、侘び寂び数寄の茶の湯文化か。
お公家のようにやわらかい物腰の立場不鮮明が、動乱乗り切り術であったり、人あたりのよさのうしろで商人はしっかり商機をうかがっていたりと、意図的清音であるのかも。
関西にだって、婆娑羅※3や祇園祭のデザインという奇抜の系譜はある。歴史が長いだけ文化の表面は落ち着いているのだろう。比べれば江戸東京は新興の開拓地だもの。

 濁音ヒット説※4でいうと、EXILEは濁音が5分の3。
ぐらんざは4分の2。
なんじゃうりゃあ、広島東洋カープは濁音ゼロじゃい。Jリーグのチーム名は清音が多い。アビスパは濁音入りばい。


※1)『番と衆—日本社会の東と西』…福田アジオ・吉川弘文館

※2)旗本奴・町奴…江戸初期に出現、かぶき者とも。
旗本水野十郎左衛門と町人幡随院長兵衛の喧嘩は歌舞伎でも有名。
父親譲りのかぶき者水野は素行不良で切腹。二歳の男児も死罪。三千石の家は断絶。

※3)婆娑羅…南北朝時代に流行った。サンスクリット語VAJRA(金剛)の音訳バジラが語源という。
博多弁「ばさら・か」は関係あるような気がする。近江のばさら大名佐々木道誉とその一族は代表的。足利尊氏の側近高師直も。師直は「仮名手本忠臣蔵」で吉良上野介に見なされている。

※4)濁音ヒット説…ジェームズ・ボンドが極めつけかな。Gパン、ジーンズ。ハリーポッター、アンパンマンはお子様向け。
半濁音・促音が印象を深めるか。濁音は子供が発音しにくい。ドラえもんは濁音入りだなあ。アンパンマンはお子様専門、ドラえもんは大人も。サザエさんは新聞漫画だから当然大人から子供まで。