博多座『六月大歌舞伎』

Date:2017年04月20日13時01分 | Category:コンサート・演劇・イベント | Writer:gt
博多座『六月大歌舞伎』
歌舞伎界の慶事。中村芝翫親子四人の
同時襲名。披露狂言は芝翫の「河内山」と一家四人の「祝勢揃寿連獅子」



夜の部「祝勢揃寿連獅子」前半の見せ場

 博多座の六月はここ数年、襲名披露公演が恒例となっているが、今年は昭和から平成へかけての名女方七代目中村芝翫の名跡がその次男中村橋之助によって八代目として甦える。その上、その息子三人も襲名という親子四人勢揃いの襲名は稀有な慶事といえよう。

 私は長い観劇歴のおかげで数々の襲名を見て来たが一家四人は経験がない。そしてこれで三代の芝翫を見ることになる。三代とは戦後の歌舞伎界の頂点を極めた六代目歌右衛門の前名六代目芝翫時代と、前述の七代目と今回の八代目である。六代目、七代目は共に真女方だったが、今回の八代目芝翫は容姿も芸風も対照的で骨太の立役だ。

 襲名披露は昨年十月からの東京・歌舞伎座に始まり、その後、今年一月の大阪・松竹座を経て、六月の博多座へと続く。

私が八代目を偉とするのは、今回までの三座八公演(東京は十、十一月の二か月興行のため、実際は昼夜二部制の演目でいうと計八公演となる)で、彼の披露狂言が毎公演毎に異なることだ。家の芸(四代目までは立役)や、過去の当り役にこだわることなく初役も多いのが特徴でそこに彼のチャレンジ精神と旗手をめざす俳優としての意欲が感じられる。

但し「祝勢揃寿連獅子」だけは例外で東京の二ヶ月目に上演されたものの再演だ。これは今回の四人の襲名の爲にいつもの「連獅子」に手を入れ芝翫の親獅子を中心に、息子三人、橋之助・福之助・歌之助の仔獅子という文字通り親子による四人連獅子の趣向である。
(博多座では三人はあったが四人の連獅子というのは初めて)。

 私が拍手したいのは親子四人の体躯の条件と芸のバランスが良い点だ(最近では芸容はさておき親獅子よりも大きい仔獅子がままあるので)。披露狂言としてはアイデア賞ものだと思う。

 さて襲名披露公演の通例として襲名を祝う周囲の顔ぶれが豪華版だ。今回も例外ではなく現在の歌舞伎界の長老であり最高位に君臨する(坂田)藤十郎を始め菊五郎、梅玉、時蔵、魁春、東蔵、鴈治郎、菊之助、獅童という大御所から若手花形まで揃う博多座版顔見世だ。紙幅の関係で手短かに演目と出演者を紹介すると―

 昼の部が、
 崋岼」(襲名の三兄弟を盛り立てて獅童が芯をつとめる荒事の古典歌舞伎)
◆崙L次廖糞毒圭が曾祖父、六代目菊五郎以来の当たり芸をあでやかに踊る)
「毛谷村」(ご当地狂言で豊前英彦山が舞台。珍しい菊五郎の毛谷村六助と時蔵の許婚お園という義太夫狂言の傑作)
ぁ峅脇盪魁廖兵粘紊遼楔演では初役の河内山が昼の部の襲名披露狂言。共演に梅玉や鴈治郎を得て、世話物の妙味と時代物の風格を名台詞で酔わせる河竹黙阿弥の名作)。

 夜の部は、
ゞ畩礁膾険厂腓痢嵜州川中島合戦」(俗に「輝虎配膳」といわれる一幕で梅玉の輝虎、獅童の山城守、魅春の老女越路に伍して、菊之助が立女形の難役お勝を演じ琴も弾く)次に一座幹部総出演の「襲名披露口上」。
∩綾劼痢崕棒揃寿連獅子」。(成駒屋一家の襲名を祝い藤十郎、梅玉、時蔵が助演)
 最後は鴈治郎が一昨年の襲名以来の出演で上方の人情噺「幸助餅」で笑いと涙を誘う。(これには魁春、獅童が共演)

 以上話題満載の襲名披露公演だが初日に魁け、五月二十九日には恒例の船乗り込みを豪華な顏ぶれが勢揃いし博多川を下る。公演、船乗り込み共に成功を祈りたい。


『六月大歌舞伎』
■昼の部/車引、藤娘、毛谷村、河内山
 夜の部/信州川中島合戦、口上、祝勢揃寿連獅子、幸助餅
■出演/中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助
■日程/6月2日(金)〜26日(月)
■チケット/A席18,000円、特B席15,000円、B席12,000円、
     C席5,000円
■お問合せ・チケット販売/☎092・263・5555
            (博多座電話予約センター)



眸輝樹
演劇エッセイスト。修猷館高校、早稲田大学第一文学部(演劇専攻)卒、九州朝日放送入社。テレビ・ラジオ等のプロデューサーを歴任。幼時からの観劇歴は七十数年になるという。