通いたくなる、ミュージアム

Date:2017年07月20日13時01分 | Category:特集 | Writer:ぐらんざ編集部




太宰府の木々に抱かれた、
国立博物館へ出掛ける


虹のトンネルを抜けると、突如現れる流線形の建造物はご存知、九州国立博物館。約110年ぶりに4番目の国立博物館として平成17年に誕生したこの博物館は、太宰府の山々に抱かれるように佇む。建築を手掛けたのは、久留米出身の建築家・菊竹清訓氏。自然との調和をコンセプトに造られたこの建物のこだわりは、随所に見ることができる。地上から屋根部分まで続くガラス張りの壁面には四方を囲む山の木々が映り込み、博物館そのものがまるで森の一部のよう。エントランスに足を踏み入れると、高さ35mの吹き抜けのホールが広がり解放感に思わずふっと息がもれる。天井を見上げれば、細い木々がずらりと並び、聞けば、九州各地の間伐材を利用したものだとか。自然環境へ配慮されたデザイン意匠だが、木が持つ温もりが来館者を優しく包み込む効果も。


何度訪れても
新しい驚きと出会える


文化財を観る上で注目してもらいたいのは文化交流展。アジアと日本の交流をコンセプトに時代の流れに沿いながら5つのテーマに分けて展示。常設展ではなく、文化交流展と呼ぶのは九州国立博物館ならではのこだわりだ。常設展というと常に同じ作品があるようなイメージだが、ここの文化交流展には訪れるたび新しい出会いがある。紙や絹、漆など劣化しやすい素材からできている文化財は、保護の観点から6〜8週間で入れ替え。さらに時期ごとに小テーマを設け、九州国立博物館の収蔵品を中心に全国の博物館・美術館から借用した文化財の展示も実施。さらに現在は、休館中の福岡市美術館の所属品の一部も九州国立博物館が管理しており、ふたつの館の収蔵品が観られるお得さも嬉しい。
 薄暗い展示室の中に浮かび上がるように照らし出されている文化財を眺めていると、一つ一つがここまで辿ってきた物語が胸に浮かんでくる。
 さて、この博物館を楽しむにはもう一つおすすめが。それは今年4月から始まった夜間開館。毎週金・土曜は開館時間を20時まで延長。このときは太宰府天満宮や参道もライトアップされ、辺り一帯が幻想的な雰囲気に包まれる。昼間とは違う、夜の博物館に歴史ロマンを感じよう。

重要文化財「油滴天目」(中国・南宋時代 13世紀 九州国立博物館)
展示期間:7/19〜9/10
画像出典:国立博物館所蔵品統合検索システム
http://colbase.nich.go.jp/collectionItems/view/eeb7969e20cdb6b82847248e1008d32c/1253


夜の九博
いま注目の夜間開館。
週末はいつもとは違う特別な夜を過ごしては?
◎開催日 毎週金・土曜 20:00まで開館(入館は19:30まで)
夜間開館日は太宰府天満宮は20:30まで参拝可能な他、参道もライトアップされる。



バックヤードツアー
昼のバックヤードツアーでは収蔵庫や修復施設を見学でき、
夜の博物館たんけん隊では、展示室の裏側を歩いたり
文化財専用の大型エレベーターの乗降体験ができる。
◎昼のバックヤードツアー
 開催日時/毎週日曜 14:00〜(所要時間50分)
◎夜の博物館たんけん隊
 開催日時/毎月第一土曜 18:00〜19:00
詳しくは九州国立博物館HPで確認を。


九州国立博物館
福岡県太宰府市石坂 4-7-2 ☎NTTハローダイヤル 050・5542・8600
【開館時間】
日曜日・火曜〜木曜日 ※月曜日は休館日/9:30〜17:00(入館は16:30まで)
金曜日・土曜日【夜間開館】/9:30〜20:00(入館は19:30まで)
【アクセス】
西鉄太宰府線太宰府駅下車、徒歩約10分

■そのほか福岡の博物館・美術館アクセス情報
 [福岡市博物館] 西鉄バス博物館北口または福岡タワー南口下車、徒歩約1分
 [福岡県立美術館] 西鉄大牟田線西鉄福岡(天神)駅]下車 、徒歩15分







熊本城を“主”とする、
美術館の意匠


熊本城二の丸公園内に姿をあらわす熊本県立美術館。今から約4百年前に築城された熊本城と、時を経て1976年に建てられたこの美術館は不思議と相馴染んでいる。この建築は、第二次世界大戦後の日本建築界をリードした前川國男氏の手によるもの。熊本城という史跡内に位置していることから、前川氏は“あたかも以前からそこに存在しているような”美術館にすることをコンセプトに置き、時を超えた調和を創り出した。
 例えば、外壁タイルはあえて釉薬をかけずに焼き締め、土そのものの色を活かし、周囲の自然と見事に調和。そして、訪れた人が驚くのは、緑の多さではないだろうか。美術館を取り囲むように生い茂る木々は、元々この場所にあったものだ。込められたのは「美術館と熊本の気候風土の中に育った樹木は共存し、共に美しく力強く育っていきたい」という願い。建設の際は樹齢が長い木はそのまま残し、まだ若い木は場所こそ移したが、養生して今も敷地内で成長を続けている。
 もう一つ、熊本城と美術館の関係性にも注目してもらいたい。熊本城の天守を“主”、美術館を“従”ととらえ、美術館はあえて高さを抑えた設計に。そして、必要な広さを確保するため、美術館では珍しい地下空間を活用した構造とした。これには意外な効果もあり、昨年の震災で熊本城が痛ましい姿となった際も、美術館は地下深く掘り下げていたため地震に強く、建物は被害を受けなかったそうだ。


熊本県立美術館は、古代から現代まで洋の東西を問わず、美術工芸品を収蔵している総合美術館だ。美術館コレクションの展示では、熊本ゆかりの古美術や近代工芸、日本の近・現代美術、欧米の美術を入れ替えながら紹介しているが、中でも注目は装飾古墳室。中に入ると暗闇の中に照らし出される彩色豊かな古墳が見える。装飾古墳とは石室や石棺、横穴墓に彫刻や彩色により文様などが施された古墳のことで、全国で500例(1993年調べ)ほど発掘。そのうち190例が熊本県内に集中しており、熊本県立美術館では、日本美術の原点として県内の代表的な装飾古墳を実物とレプリカを用いて効果的に再現しているのだ。太古の人々の感性を感じられる展示には思わず胸が高鳴る。
 また、熊本城と関わり深い美術館として切り離せないのは、肥後熊本の城主である細川家の品々。細川家の美術工芸品や歴史資料は、細川家16代護立氏によって設立された東京の永青文庫によって管理されているが、一部、熊本県立美術館に寄託されている。美術館では「細川コレクション常設展示室」を設けてそれらを公開。有力大名であった細川氏の至宝の数々を九州で観られる貴重な場所となっている。
 さて、熊本県立美術館は昨年で開館40周年。記念の「大熊本県立美術館展」が昨年4月からスタートしたが、震災の影響でわずか一週間で中止に。そんな幻の展覧会が、一年越しで開催中。40年に渡って収集されたコレクションの数々に出会いに行こう。


ミュージアムセミナー
展覧会の内容や美術館の活動についての話、
美術や歴史についての裏話などを学芸員が楽しく紹介。
「ターナーからモネへ」展関連イベント
◎「もっと外へ―風景画のあゆみ」 開催日時/8月5日(土)14:00〜15:00
◎「モネとロンドン―光は海峡を越えて」
 開催日時/8月26日(土)14:00〜15:00
 
※事前申し込みは不要


大熊本県立美術館展リターンズ
開館40周年を記念した特別展。
震災により中止となった特別展が戻ってきた!
美術館コレクションや細川コレクションから
選りすぐりの逸品を展示。
◎日時/〜9月3日(日) 観覧料/一般420円、大学生250円
国宝《刀 金象嵌銘 光忠 光徳(花押)》
(鎌倉時代、13世紀)公益財団法人永青文庫所蔵
8月8日(火)から展示


熊本県立美術館
熊本県熊本市中央区二の丸 2番
☎096・352・2111
【開館時間】
9:30〜17:15(入館は16:45まで)
※月曜日は休館日(祝日開館、翌日休館)
※8月14日(月)、8月28日(月)は特別開館
【アクセス】
熊本城周遊バス「しろめぐりん」で
熊本駅乗車〜熊本城二の丸駐車場下車、徒歩3分