愛されホテルの、いま・むかし

Date:2017年11月20日13時01分 | Category:特集 | Writer:ぐらんざ編集部

人生の節目のとき、大切な記念日、そして何気ない毎日に…。
足を運べばスペシャルな気持ちにさせてくれる、地元ホテルはどこか親しく、愛おしい存在。

今回は、愛されホテルを形づくっている“いま・むかし”のエピソードをご紹介。
愛されるのには、こんな理由があった。



 福岡にシティホテルがほとんどなかった昭和44年。アジアの玄関口として急速な発展を遂げつつあった福岡に国際的な場を、という願いから西鉄グランドホテルは誕生した。コンセプトは“福岡の迎賓館”。白く優雅な外観は女性的で優しく、人が集まり寛げる空気を醸し出している。

 今年で創業48年を迎え、今や世代を超えた思い出の場所としても愛されている同ホテル。ひとつの家族の物語を紹介したい。約40年前、あるカップルの披露宴が西鉄グランドホテルの鳳凰の間で行われた。新婦が纏っていたのは父がプレゼントしてくれたカクテルドレス。やがて二人の間には娘が産まれる。娘は、時おり両親の結婚式の写真を憧れの眼差しで眺めていた。お姫様のようなドレスを着て微笑む母と父は、キラキラと輝いて見えたそうだ。

 やがて、娘も嫁ぐ日を迎える。大切な日に選んだのは、写真に写っていた鳳凰の間と、母のドレス。40年前と同じドレスを来た娘が、同じ鳳凰の間の扉を開ける。直前に両親の結婚式の映像を見ていたゲストたちは、感嘆の声をあげた。新郎新婦が新婦の親族席をまわると、伯母やいとこたちが「ありがとう」と涙を流しながら伝える。入場前に流した映像に今は亡き伯父や伯母たちが写っていたというのだ。時を超えて、同じ空間に大切な人たちが蘇った瞬間だった。

 時代にあわせてリニューアルを行っているが、館内の至るところで創業時から大切に受け継がれているものを見ることができる西鉄グランドホテル。今日も誰かの思い出の場所として時を刻んでいる。


ロビーや1階のバー、レストランからのぞめる全長70mの滝・カスケード。創業時からある西鉄グランドホテルの象徴的な場所だが、2014年にリニューアル。
世界的庭園デザイナーの石原和幸氏により「大名の杜」として生まれ変わった。滝のせせらぎを背景に季節の花々が咲き誇り、鳥たちも訪れる正に都会のオアシスだ。






リピーターが「いつもの」とお願いするのは、創業当時から変わらないレシピで作られる伝統のビーフシチュー。九州産の和牛をつかい、ボルドーの赤ワインで一晩漬け込む。
しっかり煮詰めるとほんのりと葡萄の甘さが残る深みのある味わいに。お肉がホロホロととろける幸せの味をホテル内レストランのグランカフェ、ラ・カスカドゥで召し上がれ。





鳳凰の間の壁面を飾る鳳凰の文様は、正倉院御物の裂地より複写した図案を西陣織であらわしたもの。
鳳凰は雌雄一対で調和をなす縁起の良い鳥で、平和で幸せな空間にのみ現れるとされている。







リニューアル後の鳳凰の間も、壁面に埋め込まれた古伊万里赤絵皿や鳳凰の文様は創業時のまま訪れる人を見つめている。










西鉄グランドホテル 福岡市中央区大名2-6-60 ☎092・771・7171



 ホテルニューオータニ博多が開業してから、来年で40年。その間、天皇両陛下が度々お泊りされたホテルとしても知られている。どのように両陛下をおもてなしすれば…とスタッフ皆で知恵を絞る。そんな中、料理長が考案したのが、創業当時から変わらない製法のコンソメスープをさらに進化させた“伝説のWコンソメスープ”だった。

 仏語で「完璧な」「完成された」という意味を持つコンソメスープ。コンソメスープの味で料理人の腕がわかるとも言われ、同ホテルでは5年以上の経験を持つ料理人だけがスープ作りに携わることができる。

 コンソメスープ完成までに要するのは3日間。1日目、2日目と鶏ガラや牛骨、スジ肉、香味野菜を段階的に加え、コンソメブイヨンを作る。3日目は不純物を取り、旨みと香りを凝縮させる工程だ。使うのは卵白。冷めた状態のコンソメブイヨンに卵白を加え、徐々に過熱をしていくと灰汁や不純物が卵白に吸着されていく。このとき、温度調節を誤れば、卵白が一気に固まりスープ全てが台無しに。少しずつ慎重に、全ての不純物を卵白がからめとったら、お玉一杯ずつ丁寧に濾していく。こうしてやっと、澄みきった琥珀色の“完璧な”スープが誕生する。

 伝説のWコンソメスープは、3日目の工程を4日目にもう一度繰り返したもの。旨みがさらに凝縮され、香り高く深みのある逸品に。5日目にしてようやく口にすることができる、この御馳走スープは事前に予約すれば、私たちもオーダーすることができる。幸せなとき、辛いとき…笑顔になりたいときにいただこう。


今年7月の九州北部豪雨をうけ、9月から被災地である朝倉の野菜を使ったフェアを開催中。1階グリーンハウスでのサラダバーをはじめ、バーではカクテルやジュースとしても朝倉の野菜を提供。今回だけでなく、各地域を応援するフェアを随時開催している。






平成12年の「全国盲導犬使用者の会福岡大会開催」で会場となる。盲導犬とはいえ、70頭もの犬の受け入れに対応するのは全国のシティホテルの中で初めてのこと。盲導犬用のトイレの特設、エレベーターや各部屋に点字を設置するなど入念な準備が行われた。今でも盲導犬のための募金箱が設置されている。





開業した昭和53年の福岡は深刻な水不足。ホテルの開業パーティーは華やかなものが一般的だが、「ホテルのことだけを考えてはいけない」と水道で洗う必要がない紙コップと紙皿を用いての宴となった。この取り組みは新聞でも取り上げられ話題になったそう。





澄んだ琥珀色が美しいコンソメスープ。“ホテルの味”のベースとなる西洋料理のコンソメスープ、中華料理の上湯、和食の出汁のレシピは創業時から大切に受け継がれている。








ホテルニューオータニ博多 福岡市中央区渡辺通1-1-2 ☎092・714・1111




 博多の中心に佇む、ホテルオークラ福岡。隣接する博多座とともに博多の顔というイメージだが、開業は平成11年と比較的新しい。開業当時は意外な苦労もあったそう。何しろここは、伝統や地域との関わりを大切にする博多エリア。東京にグループ本社を持つホテルということもあり「オークラは博多のことには興味なかもんね」と見られることも。このままではいけないと、地域とのつながりのために動き、地域の集まりや、山笠、どんたくには社長を初めとする役職者が参加。

 「ホテルは地域に密着し、地元に貢献しなければならない」という想いは代々の社長に受け継がれ、次第に距離感は縮まる。今では、現社長の水嶋修三氏が山笠において何より名誉な台上がりを果たすまでに。さらに追い山が終わったその日から夏が終わるまで、大黒流の舁き山がロビーに展示されることも今や夏の風物詩だ。

 ゲストへのおもてなしでも地域密着型の一面が。例えばコンシェルジュはゲストのニーズに応えられるよう自らの足で博多の町を歩き、情報を収集。日々かわる町の情報をファイルに蓄え、サービスに活かしている。ゲストを想う気持ちはサービススタッフだけではない。例えば、総料理長をはじめ、和食、中国料理の料理長は常に食材についてアンテナを張り巡らし、九州の食材を料理に取り入れる工夫を重ねている。

 地域と手を携え、より良いものをゲストに届ける。そんな日々がホテルオークラ福岡の歴史を紡いでいる。


地下にはなんとビール醸造所が。創業当時からビール職人たちがオリジナルの地ビール「博多ドラフト」を作っている。出来立ての一杯を頂きたい。








和食や鉄板焼きのレストランで提供される日本茶は、料理長やスタッフたちが八女に足を運び、雑草刈りや茶摘みを手伝うことも。安心なものを届けたいという想いが伺える。








海外の賓客をもてなすことも多いホテルオークラ福岡。宗教による食材の選定や味付けの好みまで事前に把握し、多国籍の人に喜ばれている。








毎年7月15日〜8月31日までロビーに飾られる舁き山が、県内外から訪れたゲストをお出迎え。山を展示できるということはそれだけ地域の人たちから信頼されている証。







ホテルに足を踏み入れると、たおやかな香りに包まれる。これは中国の皇帝も愛飲していたというホワイトティーのアロマ。嗅覚でも非日常の空間にいることを感じそう。









ホテルオークラ福岡 福岡市博多区下川端町3-2 博多リバレイン ☎092・262・1111