世は万華鏡 (55)

Date:2017年12月15日18時17分 | Category:世は万華鏡 | Writer:ぐらんざ編集部


 人権侵害や悩み事相談の活動にささやかながら関わっている。この数年、相談件数は飛躍的に増え、内容も複雑になっている。介護、貧困、子育て、心の病が目立ち、まさに時代を映す鏡になっている。

 そんな折に起きた座間市の遺体バラバラ事件。孤独感にさいなまれる潜在的自殺願望者の多さに私たちは深い衝撃を受けた。ところが、増加する相談件数に対応するスタッフの充足が追い付いていない。

 3・11以降、「自助・共助・公助」と言われるようになった。とくに大切なのは共助だ。町内会の世話役や民生委員、人権擁護委員、保護司、「いのちの電話」相談員など地域社会で必要とされる仕事は山のようにある。しかし、それを担うべき人が枯渇している。ボランティア不足は共助の足元を崩しかねない深刻な事態である。
 こうした現状を肌で感じるにつけ、志ある方々にスクラムに加わって頂く方法はないか、ずっと考えてきた。そして思いついたのが「トリプル7クーポン(喜寿債)」の創設・活用だ。

「トリプル7クーポン」とは私の勝手なネーミングだが、中身と狙いは次のようなものだ。現在、地域でのボランティア活動は無報酬である。これを有償化し、「何か対価を差し上げられないか」―そう考えたのだ。

 ただし、対価は現金ではない。介護クーポンである。活動に応じて頂戴する券を「貯券」しておき、自分のための介護サービスに使えるようにする。すでに一部の自治体で似たような制度があると聞く。

 使用開始は77歳を一応の目途にする。なぜか。その年齢までは元気に対外活動を続ける目標にするためである。喜寿の「喜」は草書体で七が三つ、つまりトリプルセブン。これが「喜寿債」と命名した所以だ。

 高齢者の定義は間もなく75歳以上になるだろうから、77歳はそれよりちょっと先で、社会貢献のゴールとしても手頃でもある。念頭にあるのは圧倒的数の我ら団塊だ。この世代は好奇心旺盛で、PCにも通じている。

 にもかかわらず、多くの定年退職者たちはその能力と意欲を眠らせたまま無聊をかこっている。社会資源として実に勿体ない。ならばこの時代状況下、団塊がこぞって地域社会の「防人」として馳せ参じ、お役に立とうではないか。

「死にたい」は「生きたい」の裏返しだ。若者に明日を生きる素晴らしさを伝え、地域社会に温もりを蘇らせたいと切に思う。

(ジャーナリスト。元西日本新聞記者)




馬場周一郎=文
幸尾螢水=イラスト