今月のひと 現代の名工 陶芸家・日置南洲窯 西郷 隆文さん

Date:2018年01月17日11時44分 | Category:今月のひと | Writer:ぐらんざ編集部

必要とされれば、行って力を尽くすべき。
頼られることで、人の器は大きくなる



現代の名工 陶芸家・日置南洲窯 西郷 隆文さん



 立体的なウロコ模様が鮮烈な花器、楽焼を思わせる佇まいの茶碗、土の表情豊かな叩きづくりの壺…。全く異なる表情を持つ作品が並ぶ。ここは、鹿児島県日置市の日置南洲窯。窯を開いて40年という西郷隆文さんが温かな笑顔で迎えてくれた。

 25歳まで東京でファッションに関わっていた西郷さんが陶芸家を目指したきっかけは、上野美術館で出会った斬新な陶芸作品だったという。その色彩や圧倒的な存在感に衝撃を受けて帰郷。中学時代の恩師でもあった有山長祐氏の元で修行し、30歳で南洲窯を開く。

「これまで、いろいろ挑戦してきましたよ。板で叩いて仕上げていく叩きの技法や、土と漆を合わせた陶胎漆器、立体的な表現が特徴の蛇蝎技法、鹿児島の土壌を生かしたシラスバルーンなど、薩摩焼の伝統技法によるものもありますし、なかには楽焼や唐津焼の技法を取り入れたものもあります」と西郷さんは作品を手に取りながら、気さくに解説してくれた。

 一方で、鹿児島県薩摩焼協同組合の理事長を務め、伝統工芸の振興発展にも尽力。薩摩料理や焼酎とも手をつないで薩摩全体を盛り上げていく活動にも取り組んでいる。

「うち(薩摩焼協同組合)は窯元同士の結束も固く、技術や情報の交流も盛ん。さらに、同じ薩摩の伝統的工芸の川辺仏壇や大島紬とも、がっちりタッグを組んでいます。薩摩全体をつないで、みんなで底上げをしていかなければね」という力強くも優しい視線が曽祖父である西郷隆盛と重なる。

 「ご自身の作陶をする時間はありますか?」と問うと「夜2時間くらいかなぁ。でも必ず毎日、土に触ります。何か新しいものを作りたいという気持ちはいつでもありますよ」と創作意欲も旺盛だ。

 「60歳や70歳で第一線を退いた人も、他の場所から必要とされているかもしれない。だったら、そこへ行って力を尽くすべきです。頼られれば、がんばってそれに応えていくでしょ。そうやって器は少しずつ大きくなっていくものですよ」

70歳の節目を迎え、そろそろ自分の作品づくりに専念したいという西郷さんだが、まだまだ、その器は大きくなるんじゃないかな。



蛇蝎手法花器:複数の釉薬をかけて焼くことで、その収縮率の違いによって独特の立体的な文様が浮き上がる。


シラスバルーン薩摩黒楽焼:鹿児島独特の土、シラスの粒を細かく砕いて焼き、中に空気を含ませることで器が軽く仕上がる。