【映画】『草間彌生∞INFINITY』

【映画】『草間彌生∞INFINITY』

水玉に込められた想いは?その眼差しの先は、まだまだ無限大


草間彌生∞INFINITY

『草間彌生∞INFINITY』

【監督】ヘザー・へレンズ
【出演】草間彌生ほか
【配給】パルコ
◎11月22日よりKBCシネマにて公開

 2004年頃だったと思います。東京出張の折、用件を終え、森美術館に行きました。開催されていたのは、草間彌生さんの作品展「クサマトリックス」。色んな部屋があり、それはそれは作者の息遣いが、強烈に私の身体に降りかかってきました。見終わった後は、清々しさを感じて美術館を出ました。しかし、その後、目を閉じると、何時までも色んな水玉が点滅していたのは事実です。御姿をテレビで拝見する度に、あのとつとつとした喋り方に心惹かれるものがありました。

 今回ご紹介する作品は、日本で制作されたものではなく、アメリカで制作されたドキュメンタリー映画。インタビュー、ナレーションはほとんどが英語で、草間さんの独白は日本語で話されています。

 先ずは、彼女の初期の美しい作品に心奪われます。1929年(昭和4)3月22日、長野県松本市生まれ。幼いころから悩まされていた、幻覚幻聴を絵にぶつけていたようです。そして、1957年、日本という国の枠からはみだしたのでしょう、単身アメリカへ。絵画のみならず、立体作品、特に男根状のオブジェを幾つも重ねて作ったソファーには、正直びっくり。「南瓜」たちも登場。さらに驚きのパフォーマンス。当時の映像は、生々しく瑞々しく残されていて、若かりし頃の草間さんのエネルギーがスクリーンから伝わってきます。

 その上、強かさも兼ね備え、自分にとって必要な人物へのアプローチは並々ならぬもの。1960年代は「前衛の女王」と言われるものの、反戦運動に身を投じ、裸のパフォーマンスには、故郷・松本にいる家族にも批難が浴びせられます。アメリカでは人種差別を受け、日本では親類縁者から煙たがられ、それでも自分を貫く姿を映画は追って行きます。草間さんより少し年下になりますがオノ・ヨーコさんとどこか重なるところがありました。

 1970年代にはパートナーを亡くし、病気が悪化し入院、自殺未遂、執筆活動。1990年代に再稼働、60歳代で更に世界的に認められるようになります。

 この映画は彼女の足跡が丁寧に描かれた作品です。私はつくづく思います。今も制作意欲は健在。病気をお持ちで辛いでしょうが、その感性の源が幻覚幻聴にあるならば、不安神経症という病気そのものが、彼女の生きる上の支えでもあったのではないかと。

 スクリーン上、彼女の笑顔はほとんどありません。常に一点を見つめている様な、まばたきの少ない眼差しの先に何があるのか、もっと知りたくなりました。

佐久間みな子

佐久間みな子

KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。

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