ぐらんざ人

博多座開場20周年記念 舞台『サザエさん』 女優 藤原紀香


『サザエさん』一家の10年後が舞台に
 ♪お魚くわえたドラ猫~、追っ~かけて~♪
 オープニングテーマを聞いただけで、誰もが何の歌か言い当てることが出来る国民的人気作『サザエさん』。アニメ放送開始から50周年、作者の長谷川町子さん生誕100年を迎えた今年、作品と縁の深いここ福岡と東京で舞台版『サザエさん』が上演される。
 主役のサザエさんを演じるのは、女優の藤原紀香さん。サザエさん役の依頼を初めて聞いたときのことを、藤原さんはこう振り返る。
 「私がサザエさん?と本当に嬉しびっくりでしたし、サザエさんいくつ?と聞いたり(笑)。今回の舞台の設定が、アニメから10年後!ということで、それなら♡とワクワクしました。誰もが知っているアニメのサザエさんを忠実に演じるというよりも、10年経っていることで設定の幅、芝居の枠がまた広がると思うんです。ですから、サザエさんを演じられる喜びをかみしめながら、プレッシャーなくのびのびと演じられるかなと」
 アニメや漫画で描かれたときから、10年後のサザエさん一家。マスオさんは出世したものの毎晩帰りが遅い。波平さんは定年退職して暇を持て余し、フネさんは家族の悩みをタマに日々語りかけている。子供たちはと言えば、カツオは大学生で就職活動中、ワカメは服飾専門学生、タラちゃんは中学生に成長している。
 「みんな年齢を重ねて取りまく環境に変化があるんだけど、サザエは変わらないんじゃないかな。相変わらずおっちょこちょいで、お調子者。明るくて一緒にいると元気になる女性。そんな彼女が家族の悩みをまとめて解決していくのだと思います」
台本などあらすじの詳細はこれからだそうだが、藤原さんが思い描くサザエさん一家の未来図を教えてくれた。

サザエさんと藤原さん。似ている二人
 サザエさんと藤原さん。あまり共通点がないようにも思えるが、夫である片岡愛之助さんからは「そのまんまやん!」と声が上がるほど、二人は似ているそう。
 「先日もクリニックに行った時、会計を終えてスリッパのまま帰ろうとして呼び止められて。恥ずかしい〜そんなことが多いんです(笑)。サザエさん役が決定したことを夫に伝えたら、『地のまんまでいけるやん』と。子供の頃からおっちょこちょいで、忘れ物をする度に母から『あんたサザエさんかいな』って怒られて」と笑みをこぼす藤原さん。チャーミングな笑顔を見ていると、サザエさん役にこれ以上ぴったりな人はいないと感じた。

家族の何気ない日常が胸を打つ物語
 サザエさん一家は、今どき珍しい三世代同居。そんな暮らしについて、藤原さんは「羨ましい」と話す。
 「いやぁ、楽しそうじゃないですか。家族みんなで食卓を囲み、美味しいご飯を食べていればどんなことだって解決する気がしませんか?古き良き時代の家族のかたちなのですけど、忘れちゃいけないものだなあと。令和になっても、家族の在り方だったり、大事なものは変わらないんだ、っていうことをサザエさんたちは教えてくれているのでは」
 そんな『サザエさん』の世界では、大きな事件や出来事は起きない。繰り広げられるのは、いわゆる“普通”の人たちの日々の物語だ。
 「サザエさんのエピソードは、『母さん、魚屋さんがこう言うのよ』『姉さん、今日学校でね』など 日常の会話や何気ないシーンで創られているんですよね。どこの家庭でも起こっていることや学ぶべきことを説教臭くなく教えてくれる作品。それってすごいことだなぁと。先日も姪っ子と一緒にアニメを観ていると、三河屋さんの新人さんが失敗しちゃうお話で、波平さんが温かい言葉でフォローしていて。ちょっと涙が出た回でした。大人になっても心に響く物語だと思います」

愛をこめて創り上げる舞台『サザエさん』
 今回、脚本・演出を手掛けるのは田村孝裕氏。主役の藤原さんと初めてタッグを組む。
 「このお話が決まってからサザエさんに関してや自分のことなど、田村さんとざっくばらんにお話したいとプロデューサーに伝えました。田村さんにはこだわりがあられて、まずは書くことに集中したいと。先に役者に会うのではなく、ご自身のサザエさんに対する思いの中で台本を書きあげたいとおっしゃったそうです。もちろん、そのタイプの脚本家さんなんだと納得しました。私たち役者は、書き上がってきたものを自分の中に入れて役を表現するのが仕事。出来上がったものに、しっかり息を吹きこみますねとお伝えしてもらいました。台本にはきっと、田村さんなりのチャレンジが入っていて、原作の持つ魅力を壊さないよう、その挑戦が上手くミックスされてくるのかなと予想しています。そこには原作への絶対的な愛があるでしょうし、この愛があればどんなチャレンジもきっとお客さんに伝わると思うのです。そして、私たちキャスト陣もこの素晴らしい原作を書かれた長谷川町子先生への敬意を胸に大切に演じていきたい。サザエさんは一家団欒のお話ですから、スタッフ、役者、一丸となり家族のように愛をもって作品と向き合っていきたいと思います」
 50年間日本中の人々から愛され続けてきたサザエさん。10年後の物語もまた、たくさんの人の愛から生まれる。愛する家族と一緒に観に行こう。

山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki

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